ハイカラに生きろ。 舘鼻則孝 「時代と時代を繋ぐ者」前編

舘鼻則孝 / NORITAKA TATEHANA

CLIP | CULTURE

2017.9.15

ハイカラに生きろ。
舘鼻則孝 「時代と時代を繋ぐ者」前編
舘鼻典孝作品の世界観に迫る

 
“花魁”をテーマとして日本の昔と今を繋ぐ現代アーティスト に、その生き様や考えを伺った。

“時代と時代を繋ぐ”という作家使命


作家 舘鼻則孝。2010年、江戸時代の“花魁”からインスピレーションを受けて大学卒業時 に制作した「ヒールレスシューズ」をレディー・ガガが履いたことで、弱冠25歳にして一 躍世界的に有名になり、ニューヨークのメトロポリタン美術館にもその作品が収蔵された。彼についてそう認識している人は多い。実際の作家 舘鼻則孝については、しかし、どうだろうか。今回は、その華々しい事実の裏にある、もっと深く鋭い感覚に触れてみることにする。
 
「時代と時代を繋ぐ者」。あえて彼を一言で表現するならば、そういうことになるだろう。 舘鼻自身が作家使命の一つとしてそう感じ出したのは、東京藝術大学に所属して伝統工芸 を学び、着実にその土台ができていった頃。「日本文化を革新的に現代へ表現し、世界に発信していくこと」。それが自分の作家使命なのだと、日を追うごとに認識していった。
 
「自分が学んできた古典的な知識の引き出しを開け、現代を生きる自分とコラボレーショ ンさせる。その結論として、日本文化の現代性を捉えた新しい作品ができるんです」。
 
その頃には、今年8月に行った展覧会のタイトルでもあった、「Rethink(リシンク)」 (=日本文化を見直すこと、自分を見つめること)という大事な創作プロセスの土台も出来上がっていた。
そうしてまず出来上がったのが、この『ヒールレスシューズ』だった。
 

代表作『Heel-less Shoes Series』(2017年)


ファッションリーダー“花魁”
 
では、そもそもなぜ、花魁なのか? そう尋ねると、「花魁は当時の最も前衛的なものだったから」という答えが返ってきた。
 
結った髪の毛に何本も刺す簪(かんざし)、玉虫色に輝く唇(“ 笹紅ささべに ”)、煙管、前に結ぶ 大きな帯に、優雅に歩くための高下駄——。
 
一般社会とは違う世界に生きていた花魁だが、その全ては、町娘の憧れで、ファッションリーダーだったのだ。伝統的なものを見つめ直して革新的な作品を発信し続ける舘鼻にとって、“花魁”をメインテーマにすることは、とても自然なことだった。そこには現代に通ずる要素もたくさんあった。
 
「レディー・ガガにも花魁的な要素があると思っています。みんなが手に届かなかったよ うなラグジュアリーファッションの型を崩して前衛的な魅せ方をし始めたのは彼女ですよね。それにみんなが憧れていって、彼女が新しい時代を創ったんです」。
 
『Hairpin for TATEHANA BUNRAKU』(2016年)
 
『Tall clogs for TATEHANA BUNRAKU』(2016年)
 
 


 


アートのなかに潜むもの
 

舘鼻の作品には花魁のほかにも、見るものを魅了するモチーフやテーマがある。その一つは、最新作にも多く使用している「七宝文様」。円を重ねただけの単純なその文様は、日本の伝統的な文様であるにも関わらず、どこか西洋の雰囲気を感じさせる。
 
「最初は日本の文様として何気なく使用していたんです。でも使い始めると、例えばフランスのベランダの鉄格子や、イスラム寺院のタイル貼りにも、その文様をよく見かけることに気が付いたんです」。つまり、七宝文様(のようなもの)は、インターネットも何もなかった時代に、世界で同時多発的に使用されていた文様だったのだ。「だから僕が惹かれたのは、七宝文様のモダンさだったんですね。日本の家紋からヒントを得たルイ・ヴィトンのモノグラム柄のように、西洋的な要素も東洋的な要素も両方感じられるアイコン的なものだから」。
 
舘鼻作品に使用されている七宝文様も、その作品によって様々な顔に変化する。それを感じられるのは、世界各地のカルチャーを知っている現代人ならではの感覚だ。「古典と現代を往来するための装置」。舘鼻は七宝文様を、そう表現した。
 
『Embossed Painting Series』(2017年)
 
『Floating World Series』(2014年)

そしてもう一つの大きなテーマは、「日本独自の死生観」。 自身の頭蓋骨を型取り、鋳造彫刻として表現した『自刻像』を制作するなど、「生と死」は常に舘鼻のなかに大きなテーマとして君臨していた。
 
その概念が強く押し出されたのが、2016年、パリのカルティエ現代美術財団にて公演した 『人形浄瑠璃 文楽』。現世では思いを添い遂げられなかった2人がともに命を絶つ“道行 き(心中)”を題目として掲げたその公演は、仏教的な“来世思想”があるからこそ成り立つ、日本人ならではの死生観を浮き彫りにした物語だ。
 
舘鼻にとってそれは、“日本”をそのまま海外に輸出できるフォーマットだった。「“生と 死”が日本の中でどのように扱われてきたか。その特異性を伝えるには、お客様をその環境に巻き込むことが重要で、公演は、コミュニケーションの手段としてはとても有意義だっ たと思います」。
 
年を重ねるごとに着実に死に近づいていく感覚。死を身近に感じることで感じる生。刻々 と変化する“生と死”に向かう姿勢をこれから舘鼻がどう切り取るのか——。注目したい大 きなテーマの一つである。
 
 
『Traces of a Continuing History Series』(2015年)


ハイカラに生きろ。「舘鼻典孝のハイカラな生き方に迫る」後編はこちら。


プロフィール
舘鼻則孝(たてはな のりたか)
1985年、東京生まれ。歌舞伎町で銭湯「歌舞伎湯」を営む家系に生まれ鎌倉で育つ。シュタイナー教育に基づく人形作家である母の影響で幼少期から手でものをつくることを覚える。東京藝術大学では絵画や彫刻を学び、後年は染織を専攻する。遊女に関する文化研究とともに日本の古典的な染色技法である友禅染を用いた着物や下駄の制作をする。現在はアーティストとして、国内外の展覧会へ参加する他、伝統工芸士との創作活動にも精力的に取り組んでいる。作品は、ニューヨークのメトロポリタン美術館やロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館など、世界の著名な美術館に永久収蔵されている。

Model:Elena An
Oiran:Mayura
Photo & Movie:Robin Furuya
Hair Make-up:Rika Matsui
Styling:Yuka Kikuchi
Direction:Daichi Nakagawa

 
問い合わせ先】
ドレス、カシュクール、ネックレス/ソマルタ
エスティームプレス Tel.03-5428-0928
 
着物ドレス/ヨシキモノ
株式会社スコープココ Tel.075-415-0700





撮影機材】
ライカカメラジャパン

※本ページに掲載の写真および動画は、ライカの最新モデル「ライカTL2」で撮影しています。
 

コンパクトなボディに多彩な機能を搭載する、新しい可能性を秘めた1台として話題の「ライカTL2」。プロダクトとしての存在感、4K動画まで対応できるフレキシビリティ。用途に合わせて、6つの専用レンズがラインアップ。
●ライカのデジタルカメラ「ライカTL2」
 
【問い合わせ】
ライカサポートセンター
0120-03-5508
www.leica-camera.co.jp


 
 

SHARE ON

editor's Information

林 理永

フリーランスの編集者、ライター。ファッション誌の編集アシスタントを経て独立。現在は、女性誌や書籍、WEBを中心に活動し、「編集」という枠でイベントプロデュースにも携わっている。

SNS